「今年も雨、降っちゃうのかなぁ………」
*てるてるぼうず*
7月に入ったのに未だ季節は梅雨気分なのか、ハッキリしない天気が続いていた
そして毎年といっていいほどこの日の夜は雨、良くて曇り空しか見たことがない
今日も例外なく朝から思い出したようにポツポツと降る雨に、
窓に張り付くように空を見上げるはどこか不機嫌顔だった
「天の川なんて毎年見た覚えがないけどな……」
「やっぱり空気がきれいな所に行かないと天の川見れないかぁ…」
「確かにそうかもしれないけどな、
今日は何処行っても見れる確率は低いと思うぜ?」
「『全国的に愚図ついた天気となるでしょう』
…って天気予報のお姉さん言ってたもんね………」
じゃあ駄目元でてるてる坊主でも作ろうかなぁ…
と、窓から離れていったを見やれば、
何処から取り出したのか、真っ白な布と糸、マジックをテーブルに広げていた
「……この家にそんなのあったか?」
「ん?あぁ…これ近所のひかるちゃんたちがくれたんだ、
みんなでてるてる坊主つくろうって言ってたみたいでさ」
そう言いながらは手際よく三つのてるてる坊主を作り上げていく
そんなを見ながらふと思い出したことを口にする
「そういえば、てるてる坊主って歌があったろ?」
「てるてるぼうず てるぼうず、あーした天気にしておくれ♪ってやつ?」
「あぁ、あれって最後のほう結構残酷だよな」
「え?歌ってさっきの部分だけじゃないの?」
「いや、正式には三番まであるんだよ、で、最後に
『それでも曇って泣いてたら、おまえの首をちょんと切るぞ』ってな」
記憶を手繰りながら最後の歌詞を呟くように歌えば、
はびっくりしたように目を見開かせてから、
作った三つのてるてる坊主に語りかけるように口を開く
「首を切るとか…そんな怖い事言わないからさ、
ちょっとでいいから今夜晴れにしてな?」
そして軽くキスをしてからベランダのカーテンレールに吊した
そんなてるてるぼうずを見つめて
がキスまでして願ったんだから、半端な天気にすんじゃねぇぞ、と
こっそり脅しを掛けたりしたのはには秘密
さぁて、夜が楽しみだ……
***
そして夜
の願いが届いたのか、
それとも俺の呪いじみた脅しが影響したのか……
昼過ぎまでのどんよりした天気はすっかりなりを潜め
都会にしては見事なまでの天の川が姿を現した
「わぁ………綺麗だね」
「そうだな………此処まで綺麗にでるのは凄いな」
特別に解放されたマンションの屋上で
住人は光の河を見上げては嬉しそうな顔をしている
そして俺たちも例に漏れず隅の方、
フェンスに寄り掛かった俺にがもたれるようにして夜空を見上げていた
それから一時間、二時間と経つうちに一人また一人と住人達が部屋に戻っていく
そしていつしか、管理人も残っていた俺たちに鍵を預けて引き上げていった
「みんな居なくなっちゃったね」
「あぁ……俺たちも帰るか?」
「んー……もう少しだけこうしてちゃダメ?」
後もう少しこうしていたい
そう肩越しに俺を見上げながら首を傾げるに了承するように頷けば、
は嬉しそうに笑ってから再度夜空を見上げはじめた
こんな特別な夜だから今はまだ大人しくしてるけど、
部屋に戻ったら星を見ていた時間だけ、
俺が満足するまで愛させてもらおうと気付かれないように小さく笑った
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七夕限定なのにいつもより大分おかしな文章な気がするのは
きっと気のせいじゃないと思う