寒いのは嫌い
朝、ベッドから出るのが辛くなるし、外を歩くのも嫌になる
それに――…一人きりで過ごす部屋はいつも以上に広く感じて寂しくなるから
だから、冬はキライ
それが俺の冬に対するイメージだった
政宗に会う、三年前までは
*寒がり*
『にゃぁー……』
「んん……」
日中、日に当たっていればそれなりに暖かい10月
それでも朝夜は今までのように薄着でいられるほどの気温ではなくなっていた
『にぃぃー』
「んー……タマ、煩い、よ…」
『にぅ…』
『体育の日』が日付指定じゃなくなったお陰で現れた10月の三連休
当然のように政宗の部屋で土日を過ごした俺は、そのまま日曜の夜を明かした
そして連日、朝の寒さに負けて布団の中から出ずに寝過ごしていた
今朝も例外なく、俺は布団の住人
でも昨日とは違う点が一つ、隣に政宗がいない
寒さが苦手なはずの猫のタマより寒さがキライって訳じゃない
ただ、政宗が居ないから拗ねてるだけ
俺が起きる様子を見せなかった所為か、
タマはいつの間にか寝室から出てリビングへと向かっていたらしい
「タマ、はどうした?」
『にぃ……』
「起きなかったか…」
しょうがない子だな?なんて言いながらリビングから近づいてくる気配に、
ちょっとムカつきながら寝た振りを決め込む
起きた時に側にいなかったくせに…って、傍から見たら確かにしょうがない子かもね
でも、いつもは起きるまで側にいてくれてたんだから拗ねたっていいじゃん
なんて、考えている間に寝室のドアが開いて政宗が入ってきた
「Hey,baby cat……なぁに拗ねてるんだ?」
「…………」
「……、起きろって」
な?と言いながら隣に寝そべって抱きしめてくる腕がいつもより暖かくて
思わず擦り寄ってしまった……
途端、俺を包む腕だけじゃなく体全体を震わせながら政宗が笑うから
寝たふりが出来なくなって、悔しさと拗ねをそのままに睨みあげてみた
「クク……ンな睨んだって可愛いだけだからやめとけって」
「何その言い方、いつもは側にいるのに居ない政宗が悪いんじゃん」
「sorry、そりゃ悪かった……けどな?
亜希人が寒がって出てこないと思って色々準備してたんだよ」
部屋、昨日ほど寒くないだろ?
そう言いながら俺に捲き付いた布団を器用に剥がしていく政宗
……確かに、昨日よりは寒さを酷く感じない
「…起きるまでに戻ってこれると思ったんだけどな、悪かった」
「ん……タマに起こされた……でもいいや、もう」
今は暖かいし、政宗居てくれてるし……
そう呟きながら全身でくっつくように抱きつく
昔みたいに、一人きりで起きて行動を開始するのとは違う
今はこうして抱き返してくれる優しい人が居るし、
ベッドに乗りあがろうか迷いながらフロアからこっちを見てるタマだって居る
三年前と変わらずベッドの外に出るのも辛いし、外を歩くのも嫌だけど
こうやって好きな人のそばに入れるなら、冬も案外悪くない
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